Gemini と Gemini Advanced の違いをまとめてみた
2024年2月8日、 Google Bard のブランド名が「 Gemini (ジェミニ)」に改称されることが Google から発表されました。同時に「 Gemini Advanced 」という有料のプランもリリースされ、 Google のコンシューマー向けのAI戦略がいよいよ本格的に動き出したといえます。
一方で Gemini は大規模言語モデル(以下LLM)の名称でもあるため、 Google AIの歴史を知っているユーザーからすると、混乱を呼ぶ名称でもあります。今回は、 Google Bard と Gemini の違い、そして、無料プランと有料プランは何が違うのか、 Gemini の基本情報をまとめてみました。
Gemini アプリは Google が提供する生成AIチャットサービス
Gemini 関連のニュースを検索すると、有料プランの説明記事が多いため、もしかすると、 Gemini アプリは有料のサービスであると思っている方も多いかもしれませんが、 Google アカウントがあれば、無料で利用することができます。
Gemini アプリは引き続き無料で利用可能
ここまで Google Bard を利用してきたユーザーの皆様もご安心ください。これまで通り無料で Gemini アプリ(旧 Bard )を利用することは可能です。ただし、より精度の高いモデル「 Gemini 1.5 Pro 」を利用したい場合は 有料プランの「 Gemini Advanced 」を選択する必要があります。
リリース日 | サービス | 詳細 |
---|---|---|
~2024/02/07 | Google Bard | Google Workspace アカウント含めて Google アカウントがあれば利用可能 |
2024/02/08~ | Gemini | これまでの Bard 同様無料で利用可能 |
2024/02/08~ | Gemini Advanced | 月額 ¥2,900 / ユーザー ※2ヶ月の無料トライアル付き |
各 Gemini サービスの利用条件
Gemini はコンシューマー向けとビジネス版が存在し、コンシューマー向けについても無料版と有償版が存在します。各 Gemini サービスの利用条件は以下の通りです。アカウント種別に応じて、利用条件を確認してください。
ユーザー種別 | プラン | 利用条件 |
---|---|---|
個人アカウント | Gemini | Google アカウントがあれば無条件で利用可能 |
Gemini Advanced | Google One AI プレミアムの登録 | |
Google Workspace | Gemini アドオン契約なし | Google Workspace 管理者からの アプリ利用許可 |
Gemini Business | Google Workspace のライセンス、 及び管理者からのアプリ利用許可、 及び Gemini Business ライセンスの割り当て |
|
Gemini Enterprise | Google Workspace のライセンス、 及び管理者からのアプリ利用許可、 及び Gemini Enterprise ライセンスの割り当て |
Gemini を利用可能な端末
これは有償版の Gemini Advanced に限らないですが、 Gemini アプリはパソコン、スマホ、タブレットそれぞれの端末で利用することができます。ブラウザから Google アカウントでログインして利用する方法と、各端末( iOS / Android)専用のアプリケーション経由でのアクセスの2通りが存在します。
- 各端末(PC/タブレット/スマホ)のブラウザ経由のアクセス
- Android / iOS 向けアプリケーション(タブレット/スマホ)
iPhone に Gemini アプリをインストールする手順は以下の記事をご参考ください。
コンシューマー向け Gemini に入力した情報は学習に利用される
Gemini のプライバシーポリシーを確認すると、以下のような記載があります。
会話には機密情報を入力しないでください。また、レビュアーに見られたくないデータや、Google のプロダクト、サービス、機械学習技術の向上に使用されたくないデータも入力しないでください。
この内容は裏を返せば、以下を意味することになります。コンシューマー向け Gemini を利用する場合は、この点を理解した上でご利用ください。
- Google レビュワーがユーザーの会話内容を閲覧する
- ユーザーが入力したデータは学習に利用される
つまり、無料の Gemini も有料版の Gemini Advanced も入力したデータは全て学習されることになります。
Gemini Advanced は有償版 Gemini
Gemini アプリは無料の Google アカウントがあれば誰でも利用可能ですが、より高性能な生成AIを活用したい場合は Google Advanced の利用をお勧めします。
Gemini Advanced は Google One 「AIプレミアム」の契約で利用可能
Google One の「 AI プレミアム 」を契約すると Gemini Advanced を利用できるようになります。先日 Google は Google One の契約ユーザー数が1億を突破したと発表しましたが、このプランは生成AIだけでなく、2TBのストレージも利用することができるため、一度に2度美味しいプランになっています。
Gemini Advanced の5つの特徴
次世代モデル「 Gemini 1.5 Pro 」が利用できる
無料版 Gemini では Gemini 1.5 Flash というAIモデルが利用できますが、有償版の Gemini Advanced では、より性能の高い Gemini 1.5 Pro を利用することができます。
ビジネス版 Gemini for Google Workspace の一部機能が利用可能
ビジネス版の用途を目的とした Gemini for Google Workspace というアドオンサービスがあり、このアドオンを利用することで、直接 Google ドキュメントや Gmail から Gemini 1.5 Pro にプロンプト経由で参照することができます。
Gemini の最新機能を先行して利用できる
Gemini は今後も新しい機能が随時リリースされることが予想されていますが、 Gemini Advanced を契約している場合、そういった最新の機能にも先行してアクセスすることができます。
100万トークンを処理できる
無料版の Gemini では一度に 32,000 トークンしか処理ができないですが、 Gemini Advanced では100万トークンの処理を行うことができます。無料版と比較すると、約30倍の処理量です。
直接 Python のコードを編集・実行可能
Gemini Advanced では任意の要件を満たした Python コードを生成できるだけでなく、そのコードを画面上で直接実行することができます。また、画面からコードを編集し、再実行することも可能です。
Gemini Advanced APIは存在する?
Gemini Advanced API という名称のAPIは存在しませんが、 Gemini Advanced がサポートする大規模言語モデル「 Gemini 1.5 Pro 」のAPIは存在します。Gemini API について詳しく知りたい方はコチラをご参考ください。
無料版 Gemini と Gemini Advanced の違いとは?
ここまでの説明を踏まえて、無料版の Gemini と有償版の Gemini Advance の比較情報を以下表に整理しました。さすが有償版というだけあって、様々なメリットが存在します。以下の比較表が有償版 Gemini Advanced 契約の検討情報になれば幸いです。
Gemini | Gemini Advanced | |
---|---|---|
費用 | 無料 | 月額 ¥2,900 / ユーザー ※2ヶ月の無料トライアル付き |
大規模言語モデル | Gemini 1.5 Flash | Gemini 1.5 Pro |
処理可能なトークン数 | 32,000 | 1,000,000 |
Google One AI プレミアムの登録 | 必要無 | 必要有 |
日本語対応 | ◯ | ◯ |
ドライブストレージ | 15GB | 2TB ※ Google One AIプレミアムの特典 |
Gemini for Google Workspace の機能 | 使えない | 一部利用可能 ※ Gmail 、 Google ドキュメント |
最新機能へのアクセス | × | ◯ ※ 先行して利用可能 |
Python コードの編集と実行 | × | ◯ |
マルチモーダル対応 | 対応 ※画像とテキストに対応 | 対応 ※画像とテキストに対応 |
OpenAI o1 と Gemini Advanced の違いとは?
2024年9月12日、 OpenAI は新たな言語モデルである「OpenAI o1」を発表しました。o1 は学術的な課題、もしくはプログラミングといった論理的思考が求められる課題解決に特化した大規模言語モデルです。このモデルは Gemini Advanced とはどのような違いがあるのでしょうか。以下に比較表をまとめてみました。
Gemini | OpenAI o1 | |
---|---|---|
LLM | Gemini 1.5 Pro | o1-preview |
想定利用者 | 制限なし | 物理、化学等の研究者、ソフトウェアエンジニア |
用途 | プライベート、及びビジネスにおける利用 ※利用者に制限なし | 学術的問題の解決補助、プログラミング支援 |
応答速度 | 早い | 遅い |
費用 | 2,900円/月 | $20/月 ※ ChatGPT Plus で利用する場合 |
性能スコア(MMLU) | 85.9% | 88.7% |
一度に処理できるトークン数 | 1,000,000トークン | 128,000トークン |
マルチモーダル対応 | ◯ | × |
リリース | 2024年2月 | 2024年9月 |
API対応 | ◯ | ◯ |
Gemini Advanced と NotebookLM の違いとは?
NotebookLM は、2024年6月6日に Google が新たにリリースした生成AI搭載ツールです。 Gemini アプリはテキスト、画像、音声など、さまざまな種類のデータを処理できるマルチモーダルなモデルを目指しており、大規模な計算能力とデータセットを活用し、高度な自然言語処理タスクをこなすことに秀でています。
一方、 NotebookLM は、主に大量のテキストデータの処理に特化しており、特にテキストファイルやPDF、Webページといった、ドキュメント形式のファイルの解析に優れています。 NotebookLM はアップロードされたドキュメントやURLの内容を学習し、その情報を基に質問に答えたり、要約を作成したりできます。 研究、教育、情報整理など、ファイル形式のドキュメントを活用する場面での利用が想定されています。
NotebookLM について詳しく知りたい方はコチラの記事「10分でわかる Google の新サービス NotebookLM の使い方」をご参考ください。
Gemini for Google Workspace はビジネス版 Gemini
2024年2月22日、「 Duet AI for Google Workspace 」という Google Workspace 向けのアドオンサービスが「 Gemini for Google Workspace 」に改名されたことが発表されました。また、以下表の通り、2つのプランに分離され、 Gemini 1.5 Pro (= Gemini Advanced と同等の機能)のサポートも発表されました。
Gemini Business | Gemini Enterprise | |
---|---|---|
費用 | ¥2,260/ユーザー/月 ※ 年契約の場合 | ¥3.400/ユーザー/月 ※ 年契約の場合 |
Gmail、ドキュメント、スライド、 スプレッドシート、Meet に 組み込まれた Gemini の利用 | ◯ | ◯ |
Gemini 1.5 Pro へのアクセス | ◯ | ◯ |
エンタープライズグレード セキュリティとプライバシー | ◯ | ◯ |
15 か国語以上に翻訳された キャプションを備えた高度な会議 | × | ◯ |
Google Workspace 版 Gemini の会話データは保護される
コンシューマー向けの Gemini と Gemini Advanced は、会話データを学習に利用されるリスクがありますが、 Google Workspace 版の Gemini (旧 Bard )については、会話データが保護されることが保障されています。
Gemini でできること
私たちは Gemini を利用して、何を実現することができるのでしょうか。本章では、 Gemini で何ができるのか、機能に関する説明を行います。
※ ここで説明する Gemini はチャットサービス(旧 Google Bard )としての「 Gemini 」です。
チャットベースの課題解決
どんな質問にも、わかりやすく詳細な回答を提供します。知識に基づいた正確な情報だけでなく、論理的な推論や洞察も提供します。質問のコンテキストを理解し、関連情報や参考資料も提示します。
情報を整理する
長い文章を要約したり、重要なポイントを抽出したりします。複雑な情報を整理し、わかりやすい表やリストにまとめます。情報の信頼性を評価し、偏見や誤情報を見抜き、正確な情報のみを提供します。
文章を作成する
メール、レポート、論文など、さまざまな文書を自動で作成します。詩、小説、脚本など、創造的な文章も作成できます。文章の校正や修正も行い、より質の高い文章に仕上げます。
文章を翻訳する
100以上の言語間で高精度な翻訳を行います。単語やフレーズだけでなく、文脈やニュアンスも考慮した翻訳を提供します。専門用語や業界用語にも対応し、正確な翻訳を行います。
プログラミングコードを生成
Python、Java、JavaScriptなど、さまざまなプログラミング言語のコードを自動で生成します。単純なコードだけでなく、複雑なアルゴリズムやデータ構造も生成できます。コードのテストやデバッグも行い、より質の高いコードに仕上げます。
Gemini の使い方
前述した「 Gemini の利用条件」を満たしていることを前提に、 Gemini を利用する方法について説明します。 Gemini は無料で利用できるサービスであるため、本章の説明手順は Google アカウントを持っている全てのユーザーが対象となります。
プロンプトを送信し回答を得る
① Gemini へのアクセス
まずは Gemini へ接続しましょう。コチラをクリックし、 Gemini にアクセスしてください。 Gemini にアクセスするためには Google アカウントによる認証が必要であるため、 認証が対象のブラウザで実施されていない場合は、最初に Google アカウントによるログインが必要になります。
② プロンプトの入力
Gemini にアクセスしたら、フォームに対してプロンプト(生成AIに対する指示メッセージ)の送信を行います。ちなみに、入力については、テキストメッセージだけでなく、画像の送信も可能です。画像の内容を解析したり、OCRを実施したりすることも可能です。
③ 回答を得る
プロンプトを送信して数秒すると、 Gemini から回答が返ってきます。
④ 回答結果を活用する
Gemini から得られた回答は、 Gmail や Google ドキュメントで開いたり、この会話自体をURLで他者に共有することも可能です。
それ以外の Gemini の使い方
Gemini ができるのは、ユーザーから送信されたプロンプトに対して回答を出力するだけではありません。回答を Gmail や Google ドキュメント等に出力したり、 YouTube 上の動画を検索したりすることもできます。
まとめ
Bard が Gemini に名称変更されたニュースは、個人的に非常に驚きました。なぜなら、大規模言語モデルの Gemini をそのままサービス名としてしまうことに Google の焦りを感じたからです。ただ、逆に言えば、生成AIに対して Google はかなりの本気モードであることも実感しました。Google のここ最近のAIに関する動きは非常に活発で、近いうちにまた新たなサプライズが発表されるかもしれません。
また、 Google Workspace が Gemini (旧 Bard )をエンタープライズエディションでサポートしたことも、注目すべきニュースの一つです。コンシューマー向けだけでなく、ビジネス向けの生成AIについても Google の本気度を感じます。今回のニュースはあくまで序章であり、さらなるアップデートが期待できると思います。今後 Gemini がどのような展開を見せてくるのか、非常に楽しみです。